ASDの子どもの保護者が
求める支援のカタチとは?
レポート5を通して、ASDの子どもの保護者が周囲との関係性の中で悩みを抱えていることを見てきたね。最終回であるこのレポートでは、ASDの子どもとその保護者が、実際にどんな支援を求めているのかを見ていくよ。
周囲の理解や支援で変わる、
子育てへの意識
ASDの子どもに対する周囲からの理解・支援については、ASDの子どもの保護者はどう思っているんだろう。
まず、「ASDの子どもの子育てに周囲の理解や支援が必要か」という問いに実に53.4%と半数以上の保護者が「とてもそう思う」と答えているんだ。
その一方で、「子育てに周囲の理解や支援が得られているか」という問いに対しては、「とてもそう思う」と答えた保護者は、17.4%しかおらず、その必要性に対して大きなギャップがあることがわかったよ。
次のグラフを見てみて。棒グラフは「ASDの子どもの保護者全体の回答割合」で、折れ線グラフは「そのうち周囲の理解または支援がとても得られていると感じている保護者の回答割合」だよ。
後者の保護者のほうが、全体的に子育てへの意識がポジティブになっていることがわかったよ。特に「自分自身も成長を感じる」「子どもとの絆を感じる」「日常生活に幸せを感じる」の数値が高くなっているね。このことから、改めて周囲の理解や支援の重要性がわかるね。
保護者が求める支援の環境や内容、
子育てツールを大調査
ここからはASDの子どもの保護者がどんな相手(人や機関)に支援を求めているか、そして実際に支援を得られているかどうかを見ていくよ。
このグラフで特に注目したいのが、必要だけど実際に支援を得られている人の割合が少ない、「1位:国・自治体などの公共機関・相談窓口」、「6位:専門家」、「7位:友人・知人」「8位:NPO・協会」、「9位:公民館・地区センター・児童館」、「10位:保育園:保育所」の6つの項目。ASDの子どもの保護者は様々な支援の場を必要としているけど、実情とのギャップがまだまだ大きいんだね。
続いてASDの子どもの保護者がどんな内容の支援を求めているか、その支援を得られているかを見てみよう。
必要だけど実際に支援を得られている人の割合が少ないものをピックアップすると、「1位:友達との関わり方や社会性を伸ばす支援」、「2位:好きなこと・得意なことを伸ばせる習い事や教材」、「5位:好き・得意なことを見つけられる習い事や体験サービス」などの項目があるよ。
ほかにも「7位:自分の子どもにピッタリなメンターを見つけるサービス」や「8位:自宅での良い過ごし方に関する情報やアイデア」などが必要とされているみたいだね。
さて、次のグラフは、ASDの子どもの保護者が考える子育てに必要なツールについて聞いてみたものだよ。
上位2つを見てみると、「1位:コミュニケーションを活発にするための教育ツール(60.7%)」、「2位:人の気持ちや感情がわかるようになるツール(59.6%)」と、コミュニケーションの力を伸ばすためのツールが特に必要性を感じているみたい。
ほかにも「3位:スケジュールを管理できるツール(43.3%)」、「4位:時間の認知や切り替えに役立つツール(40.7%)」で、苦手とする子どもが多い、時間感覚についてのツールが求められているんだね。
周囲の理解や支援は、子どもの
可能性を前向きに捉える力になる
ASDの子どもの保護者にとって、周囲からの理解や支援が大切なことを見てきたけど、その理解や支援を得られている状況が、どのような意識の変化につながっているんだろう。
ASDの子どもの保護者のうち「子どものASDの特性を強みに思う人」は60.9%。でも、「理解や支援が得られているASDの子どもの保護者」で見ると76.8%と、15.9ポイント向上しているんだ。周囲からの理解や支援が、保護者の前向きな気持ちにとっていかに大切かが読み取れるね。
最後に、ASDの有無や周囲の理解・支援の有無によって、子どもの将来の可能性への意識にどんな変化が生まれるかを見てみよう。
「子どもの将来の可能性が楽しみ」と回答した人の割合を見ていくと、典型発達の子どもの保護者が35.2%なのに対して、ASDの子どもの保護者は19.1%と、16.1ポイントも下がってしまうんだ。でも、ASDの子どもの保護者のうち周囲からの理解または支援をとても得られていると感じている保護者で見てみると、32.6%と、典型発達の子どもの保護者と変わらない数値になったんだ。
周囲からの理解や支援によって、子どもの将来の可能性についての捉え方にもこれだけ違いが出てくるんだね。
だからこそ、周囲の人たちがASDについて理解して、ASDの子どもやその保護者への支援の輪を広げていくことが大切なんだ。この調査レポートが、そのひとつのきっかけになるとうれしいなあ。
全6回でお届けしてきた、ASDの調査レポートはこれでおしまい。このサイトでは他にもASDについて学べる様々なコンテンツがあるから、ぜひ見ていってね。
ASDと子育て実態調査・調査概要
調査手法: | インターネット調査 |
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調査エリア: | 全国 |
調査時期: | 2020年1月 |
調査対象者: | 0~22歳の子どもと同居する20~60代の保護者(男女) ①ASDと診断された子どもの親(n=545) ②典型発達の子どもの親(n=747) |
調査レポートに対する
専門家の声
今回のレポートでは、苦手なことに対する支援だけではなく、好きなこと・得意なことを伸ばせる習い事や教材、体験サービス、子どもにぴったりのメンターを探すサービスなど、お子さま自身の強みを活かす、伸ばす機会や関わり、支援の必要が上位を占めていました。
しかしその一方、それらが足りていないと思われている保護者さまが多いという結果でもありました。何より、そのような支援が足りていると感じている保護者さまは、お子さまの特性をより好意的に捉えられることが見えてきました。
子育て支援を求めているが得られていない対象に「友人・知人」も含まれています。お子さまや保護者さまの友人や知人でもある私たちがASDについての理解をさらに深め、支援に繋げていくことでお子さま、保護者さまの将来の可能性に貢献していけるのではないかと思います。
【専門家プロフィール】
菅佐原 洋
公認心理師/臨床心理士/臨床発達心理士
LITALICOジュニア チーフスーパーバイザー
発達心理学や応用行動分析学を専門とし、発達障害のある子どもへの直接支援、幼・小・中学校教職員への特別支援アドバイザー、教育センター等での研修などに20年以上携わっている。また大学教員として、臨床心理士育成などに関わっており、現職においても支援に関わる指導員への研修やスーパーバイザーの育成の統括を担当している。