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調査レポート03

性格や特長を調べて見えた、
ASDの子どもの「好きのパワー」

レポート2を通して、ASD(自閉症スペクトラム)の特性の理解について、当事者とそれ以外で理解ギャップがどこにあるのかということがあるかということがわかったね。このレポート3では、ASDの子どもが、性格にどんな傾向があって、どんなことが得意なのかを具体的に見ていくよ。

3つのグラフで見る、
ASDの子どもの性格の傾向

典型発達の子どもとASDの子どもを比べたら、性格にどんな違いが見られるんだろう?「ひとつのことに熱中する or 興味を示すものの幅が広い」など、対になる性格を2者択一で保護者に提示して調査したよ。ここでは、特徴的だった3つの傾向についてひとつずつ紹介していくね。

保護者からみたASDの子どもの性格の傾向1保護者からみたASDの子どもの性格の傾向1

最初に見ていくのは、ものごとへの興味の持ち方について。上のグラフを見てわかるように、ASDの子どもは、「興味を示すものの幅が広い(25.9%)」よりも「ひとつのことに熱中する/ハマる(74.1%)」という傾向があるみたいだね。典型発達の子どもは、どちらもだいたい同じくらいの割合だから、この傾向は特徴的と言えるよね。

保護者からみたASDの子どもの性格の傾向2保護者からみたASDの子どもの性格の傾向2

次に、子どもの気持ちの切り替えについて見てみよう。ASDの子どもは「気持ちの切り替えが早い(25.7%)」よりも「特定の状況に対するこだわりが強い(74.3%)」という傾向があることがわかったよ。典型発達の子どもの場合は、ASDの子どもとは反対の傾向があるようだね。

保護者からみたASDの子どもの性格の傾向3保護者からみたASDの子どもの性格の傾向3

今度は、遊び方のスタイルについて見ていくよ。ASDの子どもは「みんなでわいわい遊ぶのが好き(18.2%)」よりも、「一人で集中して遊ぶのが好き(81.8%)」という傾向があるみたい。この対比での傾向の出方は典型発達の子どもも同じなんだけど、ASDの子どものほうが数値として高く出ているんだ。

ここまで見てきた3つの調査結果は、もちろん一概にどちらが良い・悪いということではないし、これがASDのみんなに当てはまる傾向だと言うわけではないけど、ASDの子どもたちを理解する一つの指標として参考にできそうな結果だね。

ASDの子どもの特長は、
「没頭力」と「記憶力」

性格の傾向が見えてきたので、次はASDの子どもにどんな特長があるのか、具体的に見ていこう。ASDの子どもの保護者と典型発達の子どもの保護者に自分の子どもについて聞いてみたよ。

保護者から見たASDの子どもの特長TOP10保護者から見たASDの子どもの特長TOP10

ASDの子どもの特長TOP10を見てみると、1位の「好きなものや興味があるものに対する探究心が強い」、2位の「何かをやり始めると、自分が納得するまでやめない」といった「没頭力」についての項目が上位にあがっていたよ。特に1位と2位の項目については、典型発達の子どもと比較するとかなり高い数字になっているね。

もうひとつ注目したいのは「記憶力」についての特長。4位の「一度行った場所や道順を正確に記憶する(34.7%)」や6位の「映画やアニメのセリフを覚える」などの項目があがっているよ。

ほかにも3位の「周りが気づかない変化によく気づける(39.4%)」といった項目もASDの子どもの特長としてあげられるよ。

ASD特徴の捉え方で、
調査結果はどう変わる?

今回の調査で、ASDの子どもの保護者のうち、子どものASDの特性を「強み」に思うことがあると答えた保護者の割合は、約6割いることがわかったんだ。

子どものASDの特性を「強み」に思うか子どものASDの特性を「強み」に思うか

次のグラフを見てみよう。これは、さっき見た「ASDの子どもの特長TOP10」のグラフに、子どものASDの特性を「強み」に思うことがあると答えた保護者の回答割合を重ねたものなんだ(※「ASDの子どもの特長TOP10」と同じデータから抽出)。すべての項目でとても高い数字になっていることがわかるね。

ASD特性を強みに思う保護者からみたASDの子どもの特長TOP10ASD特性を強みに思う保護者からみたASDの子どもの特長TOP10

ここまでの調査結果で見てきたように、ASDの子どもは好きなことや得意なことがはっきりする傾向があって、そうした特性を保護者が「強み」と捉えることで、もしかしたら子どもにもポジティブな影響があるかもしれないね。

次のレポートでは、ASDの保護者の「好き」が持つパワーについて寄せられた、子どものエピソードを紹介していくよ。

調査レポートに対する
専門家の声

今回の調査で順位の高かった探求心の強さ、納得するまでやめないといった特性が、周囲から「○○はかせ」や「○○といえば△△さん」といった評価につながっていくケースも見られます。ただし、熱中、集中する対象が、必ずしも周りからわかりやすいものばかりとは限りません。「なんでそれ?」と周囲が思うものの場合もあります。

ただ、対象が何であれ、熱中して楽しめるもの・ことは、本人なりの余暇や趣味として尊重することが大事です。余暇や趣味が他者との関わりや社会参加、生活の質(QOL)の向上などにつながるといったことが、さまざまな研究で指摘されています。また、何か落ち込んだり、興奮してしまった時に、淡々と一人で集中できる活動をすることで、気分の切り替えができるといった場合もあります。

「好きのパワー」をいかにうまく生活に取り入れ、活かしていけるかを考えることで、子どもにとっても保護者にとってもよいサイクルにつなげていきやすくなるでしょう。

【専門家プロフィール】

菅佐原 洋

公認心理師/臨床心理士/臨床発達心理士
LITALICOジュニア チーフスーパーバイザー

発達心理学や応用行動分析学を専門とし、発達障害のある子どもへの直接支援、幼・小・中学校教職員への特別支援アドバイザー、教育センター等での研修などに20年以上携わっている。また大学教員として、臨床心理士育成などに関わっており、現職においても支援に関わる指導員への研修やスーパーバイザーの育成の統括を担当している。

ASDと子育て実態調査・調査概要

調査手法: インターネット調査
調査エリア: 全国
調査時期: 2020年1月
調査対象者: 0~22歳の子どもと同居する20~60代の保護者(男女)
①ASDと診断された子どもの親(n=545)
②典型発達の子どもの親(n=747)

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